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news 2026.01.19 約10分

タイBOI新規則2025|外国人雇用基準・土地所有恩典の変更が日系企業に与える影響

タイ投資委員会(BOI)は2024〜2025年にかけて奨励条件を見直しました。外国人就労者の雇用要件の変更、土地所有特権の条件変更、新たな対象業種の追加など、BOI奨励を受けている・これから取得予定の日系企業が把握すべき実務ポイントを解説します。

この記事のポイント

  • BOIは2024〜2025年に奨励条件の見直しを実施。外国人雇用基準・土地所有恩典に重要な変更がある
  • 新たにデジタル・グリーンエネルギー・医療等の業種でBOI奨励が拡充・再設計されている
  • 既存のBOI奨励取得企業は「条件遵守」の再確認が急務。これから取得を検討する企業には新たな機会も

はじめに

タイ投資委員会(BOI / Board of Investment)の奨励制度は、外国人事業法(FBA)の規制を超えて外資100%での進出を実現し、法人税免除などの税制優遇を享受できる「タイ進出の最強カード」のひとつです。BOI奨励の基本的な仕組みについては、当事務所の連載「BOI(タイ投資委員会)の奨励制度とは?【連載第4回】」をご覧ください。

本記事では、2024〜2025年にかけてBOIが実施・公表した奨励条件の見直しの内容と、日系企業への実務的な影響に絞って解説します。


1. なぜBOI規則が変わったのか

産業政策の転換:「タイランド4.0」から「BCG経済」へ

BOIの奨励対象は、単なる外資誘致の道具から、タイの産業政策実現の手段へと進化しています。近年のタイ政府は「BCG経済(Bio・Circular・Green Economy)」——生物経済・循環型経済・グリーン経済——を国策として推進しており、BOIの奨励業種もこの方針に沿って再設計されています。

日系企業にとって身近な製造業・自動車・電機分野に加え、デジタルサービス・半導体・グリーンエネルギー・医療・農業テクノロジー等の分野での奨励が拡充されています。

FBA改正との連動

前回記事で解説した外国人事業法(FBA)の改正と連動して、BOI奨励の在り方も見直しが続いています。FBA規制の一部が緩和されたとしても、BOI奨励は税制優遇・外国人就労者上乗せ・土地所有特権等の面で依然として大きなメリットを持つため、改正後も活用価値は高いと考えられます。


2. 主な変更点

① 外国人就労者の雇用要件の変更

BOI奨励を受けた企業は、タイ人従業員比率にかかわらず一定数の外国人就労者(ワークパーミット保有者)を雇用できるという特典があります。従来は「外国人1名につき払込資本金200万バーツ以上」という基準が一般的でしたが、この算定基準が業種・投資規模に応じた柔軟な基準へと見直されています

特に、デジタル・IT・高度技術職の外国人専門家については、雇用要件の緩和が検討・実施されており、スタートアップや研究開発拠点の立ち上げをサポートする方向性が明確です。

実務上の注意点:既存のBOI奨励企業は、現在の外国人就労者数と払込資本金の比率が新基準のもとでも適正かどうかを確認する必要があります。更新手続きの際に指摘されるケースがあるためです。

② 土地所有特権の条件変更

BOI奨励企業は、原則として外国人が土地を所有できないタイにおいて、例外的に土地の所有・長期賃借が認められるという重要な特典を持ちます。この特権の条件として、これまでは「奨励事業に使用する土地に限る」という原則が適用されてきましたが、2024年以降、条件の解釈・運用が一部厳格化されているとの実務報告があります。

具体的には、事業目的以外の用途(社宅・保養施設等)に使用している土地についての扱いが問題となるケースがあり、土地の使用目的とBOI条件の整合性の確認が重要になっています。

③ 新奨励業種の追加・拡充

2024〜2025年にかけてBOIが奨励業種として追加・拡充した主な分野は以下のとおりです。

分野主な奨励内容
データセンター・クラウドサービス法人税8年免除、外資100%可
半導体・先端電子部品製造法人税最大13年免除、研究開発費の優遇
EV(電気自動車)関連バッテリー製造・充電インフラ整備への奨励強化
グリーンエネルギー太陽光・風力・水素エネルギー関連への拡充
医療・バイオテクノロジー医療機器製造・バイオ研究拠点への優遇
農業テクノロジー(AgriTech)スマート農業・フードテック向け新設カテゴリ

日本からタイに進出する中小製造業にとっても、EV関連サプライチェーンやグリーン製造への切り替えを機にBOI奨励を取得するチャンスが広がっています。

④ 奨励条件の遵守(Compliance)要件の厳格化

BOI奨励を受けた後の条件遵守(コンプライアンス)チェックが、近年より厳格に実施されています。主な確認項目は以下のとおりです。

  • 払込資本金の充足状況
  • 奨励事業の実際の開始・稼働状況
  • 外国人就労者数と資本金の比率
  • 土地・建物の使用目的
  • 年次報告書(Annual Report)の期限内提出

特に「奨励事業を実際に開始していない」「事業内容が変わったのにBOI条件変更の届出をしていない」といったケースで、奨励の取消しや制裁が課されるリスクが高まっています。


3. 日系企業への実務的インパクト

① 既にBOI奨励を取得している企業

最も重要なのは、現在の奨励条件の遵守状況の総点検です。特に以下の点を確認することが考えられます。

  • 外国人就労者の人数と払込資本金の比率が新基準に合致しているか
  • 土地・建物の使用目的が奨励事業と整合しているか
  • 事業内容の変更(新製品・新サービスの追加等)がBOIへの届出なく行われていないか
  • 年次報告書の提出が滞っていないか

BOIのコンプライアンス審査は定期的に実施されており、問題が見つかった際の是正には時間と費用がかかります。早期発見・早期対応が重要です。

② これからBOI奨励を検討する企業

新たな奨励業種の拡充により、従来はBOI対象外だった事業もカバーされる可能性が高まっています。特に以下の観点での検討をお勧めします。

  • EV・グリーン製造への転換を検討している製造業は、BOI奨励の取得タイミングを早めることで大きな税制優遇を得られる可能性があります
  • デジタル・IT系の事業は、データセンターやソフトウェア開発拠点の設置においてBOI活用が有効です
  • 研究開発拠点の設置を検討する企業は、R&D費の特別控除等の優遇も活用できます

③ FBA改正との組み合わせ戦略

FBA改正が実現しFBAの規制が一部緩和されたとしても、BOI奨励は税制・就労・土地特権の面で依然として強力なツールです。「FBA改正でFBLが不要になったからBOIは不要」という発想ではなく、両制度を組み合わせた最適な進出形態の設計が重要になります。


4. 今後のスケジュール・見通し

BOIは毎年奨励条件の見直しを行っており、今後も継続的な変更が予想されます。特に2025〜2026年にかけては、FBA改正・OECD加盟プロセス・BCG政策の三つの政策目標が重なる時期であり、BOI奨励制度の大幅な再設計も視野に入っています。


まとめ — 今やるべき3つのこと

① 既存BOI奨励のコンプライアンス状況を総点検する

外国人就労者比率・土地使用目的・年次報告書の提出状況を確認し、問題があれば早期に是正手続きを進めましょう。

② 自社の事業が新奨励業種に該当するか確認する

EV・グリーン・デジタル・医療等の分野で事業展開・拡張を検討している場合、BOI奨励の新カテゴリへの該当可能性を確認することが考えられます。

③ FBA改正とBOI奨励の組み合わせ戦略を再設計する

法改正の動向を踏まえ、「FBA+BOI」の最適な組み合わせを設計しておくことが、競合他社に先んじた進出戦略を実現します。

これらの検討には、日本法とタイ法の両面に精通した専門家のサポートが有効です。当事務所では、提携先JTJB International Lawyersのタイ人弁護士と連携して対応いたします。


BOI奨励制度の活用や新規取得の検討について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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本記事はタイの法制度に関する一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、タイの弁護士資格を有する専門家にご相談ください。当事務所では提携先JTJBのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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