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company 2025.12.01 約12分

合弁会社・株主間契約の設計と、タイ進出の全体的な進め方【連載第5回(最終回)】

タイにおける合弁会社(Joint Venture)の法的仕組みと株主間契約の設計ポイントを解説。連載全5回のまとめとして、タイ進出を検討する日本企業向けのチェックリストも紹介します。

この記事のポイント

  • 合弁会社(JV)はFBA規制業種において外国企業がタイ市場に参入する現実的な選択肢の一つ
  • 株主間契約(SHA)で「意思決定の仕組み・出口戦略・紛争解決」を事前に設計することが、合弁成功の鍵の一つ
  • 本連載のまとめとして、タイ進出のチェックリストと専門家活用の考え方を整理

はじめに

本連載の最終回では、タイへの進出形態のなかで最も複雑な側面を持つ**合弁会社(Joint Venture)**の仕組みと、株主間契約を通じたリスク管理について解説します。また、連載全5回を振り返り、タイ進出を検討する日本企業向けの実践的なチェックリストをご紹介します。


合弁会社(JV)とはどういう形態か

なぜ合弁を選ぶのか

合弁会社は、外国企業とタイ企業(または個人)が共同で設立する会社です。タイ進出において合弁が検討される主な理由は以下のとおりです。

理由内容
FBA規制の回避タイ人パートナーが51%以上を保有することで、外国人事業許可(FBL)なしに規制業種での事業が可能になるケース
現地ネットワークの活用タイ人パートナーの顧客・仕入先ネットワーク、行政との関係
許認可・免許の取得タイ資本の要件が設定されている業種での事業展開
リスク・コストの分担現地パートナーとのリスク共有、初期投資の分担

合弁会社の法的形態

タイにおける合弁会社は、多くの場合、**タイ有限会社(บริษัทจำกัด)として設立されます。合弁の合意内容(出資比率・経営権・利益配分等)は、定款(Articles of Association)と株主間契約(Shareholders’ Agreement / SHA)**によって規律されます。


株主間契約(SHA)の主要条項

合弁会社の成否を左右する最大の要素の一つが、株主間契約の設計です。特に以下の点を事前に合意しておくことが重要です。

1. 意思決定の仕組み

項目設計のポイント
取締役会の構成各株主の取締役任命権(例:外資側は取締役の○名を指名できる等)
決議要件普通決議・特別決議の定足数、重要事項への拒否権(ベト権)の設定
代表者(社長)の選任外資側またはタイ側のどちらが代表者を出すか
デッドロック条項取締役会・株主総会が行き詰まった場合の解決手続

2. 株式譲渡の制限

合弁会社において、意図しない第三者が株主に加わることを防ぐための条項が重要です。

  • 先買権(Right of First Refusal):一方の株主が株式を売却しようとする場合、他方が優先的に買い取れる権利
  • Tag-Along権:少数株主が多数株主の売却に乗じて同条件で売却できる権利
  • Drag-Along権:多数株主が一定の要件を満たす場合に少数株主に売却を強制できる権利

3. 競業禁止・秘密保持

  • 競業禁止条項:合弁事業と同種の事業を他の場所・会社で行うことの禁止(期間・地域の設定が重要)
  • 秘密保持条項:合弁契約・事業上の秘密情報の第三者への漏洩禁止

4. 出口戦略(Exit)

合弁関係を解消する際の手順を事前に定めておくことは、紛争の激化を防ぐうえで重要です。

出口シナリオ一般的な対処方法
一方の株主が買い取るBuy-Sell条項(Shot-Gun条項):一方が提示価格で、他方が選択的に買い/売りを選べる
第三者への売却売却条件・承認手続を事前に規定
会社の解散解散手続と残余財産の分配ルールを規定

5. 準拠法・紛争解決

  • 契約の準拠法をタイ法とするか第三国法とするかの選択
  • 紛争解決方法:タイ国内裁判所、国際仲裁(SIAC・ICC等)の選択
  • 仲裁地・言語の指定

合弁パートナーの選定における注意点

合弁の成否は、法律・契約の設計だけでなく、パートナーの信頼性と目的の一致に大きく左右されます。以下の点を事前に確認することが考えられます。

  • タイ人パートナーが当該業種での実績・許認可を実際に持っているか
  • 出資能力・財務状況は十分か
  • 経営判断の方向性・事業目標が合致しているか
  • 意思決定のスタイルが自社と合うか(タイ・日本の文化的差異を含む)

連載のまとめ:タイ進出チェックリスト

5回にわたる連載のまとめとして、以下のチェックリストを参考にしてください。

ステップ1:事業の整理

  • タイでどのような事業活動を行うか(業種・サービス内容)を明確にする
  • 収益活動を行うか、連絡・調査が主目的かを確認する

ステップ2:外国人事業法(FBA)の確認

  • 事業内容がFBA附表1〜3のいずれかに該当するか確認する
  • 附表1に該当する場合は参入不可(またはタイ人が100%保有の形態が必要)
  • 附表2・3の場合はFBL取得またはBOI奨励の可否を検討する

ステップ3:進出形態の選択

  • 事業目的・規模・FBA規制・BOI適否を踏まえて形態を選択する
  • 駐在員事務所 / 支店 / 現地法人 / 合弁 / BOI奨励のいずれが適切か

ステップ4:パートナー・株主構成の設計

  • FBA規制業種の場合、タイ人株主・合弁パートナーの選定と実質的な権利設計
  • 名義株主(Nominee)を使わないことを確認する

ステップ5:契約・書類の準備

  • 株主間契約(SHA)の主要条項を交渉・合意する
  • 定款・設立書類をタイ法弁護士とともに準備する
  • 就業規則・雇用契約書のタイ語版を整備する

ステップ6:登記・許認可の取得

  • DBDへの会社設立登記
  • 必要に応じてFBL・BOI奨励の申請
  • 歳入局・社会保険への登録

ステップ7:継続的なコンプライアンス

  • 年次の財務報告・税務申告(法人税・VAT等)
  • BOI奨励企業の場合は年次報告
  • 雇用・労働保護法上の義務の履行

連載を通じて伝えたかったこと

タイへの進出は「形態を選んで登記すれば終わり」ではありません。外国人事業法・BOI制度・労働法・PDPA(個人情報保護法)・税務など、複数の法域が交差する複雑な環境です。

日本の法律の知識は、現地タイの法律と組み合わせて初めて機能します。タイ進出の計画段階から、日本法とタイ法の両面を理解した専門家のサポートを活用することが、リスクの最小化につながると考えられます。


タイ進出の計画や法務設計についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。タイ法に関する具体的な対応は、提携先JTJB International Lawyersのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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本記事はタイの法制度に関する一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、タイの弁護士資格を有する専門家にご相談ください。当事務所では提携先JTJBのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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